僕の知人は、アランヤプラテートからいったんカンボジアに出、再度、タイに入国しようとした。ところがそこで入国拒否に遭ってしまった。6ヵ月間に90日しかタイに滞在できないというルールに引っかかってしまったのだ。3ヵ月後の予約が入った航空券を見せてもだめ。10万バーツほどが入った預金通帳を見せてもタイには入国できなかった。
しかたなく、ポイペトの安宿に泊まることにした。夕方、飯でも食おうと1階に降りると、ひとりの日本人が、宿の主人と話し込んでいた。
訊くと、ポイペトに3ヵ月も滞在している日本人だった。
「ひょっとして入国拒否ですか」
向こうから話しかけてきた。知人の表情を察したのだろうか。
「ここ1ヵ月でもう5人目ですよ。入国拒否に遭った日本人と会ったのは。いや、大変なことです。タイはよほど、意味もなく滞在している外国人が嫌なんでしょうな」
年齢は30代半ば。服装はバックパッカー風でもない。カンボジアによくいるような、女遊びの明け暮れていたり、ドラッグにはまっている人間が発する汚れのようなものもない。かといって、ポイペトで仕事をしている風でもなかった。
「いや、ちょっとしたNGOに属していましてね。いま、このそばで学校をつくってるんで、その監視に来てるんです。ちょうど会社を辞めたところで、行ってくれないかって頼まれまして。無給ですよ。小さなNGOですから。ビザ? カンボジアは簡単です。200ドルも払えば、すぐに1年の滞在許可を出してくれる。そこでまた200ドルって続けていけば、永遠に滞在することができます。タイとは違いますよ、ここは」
彼はタイへの入国拒否に遭った日本人の抜け道を知っているわけではなかった。しかしこれまで聞いた話を教えてくれた。
「とにかくアランヤプラテートの国境が厳しいっていう話ですよ。ここで聞いた話では、ここから北に向かった、タイのスリンに抜ける国境、それからパイリンからタイに入る国境、そしていったんプノンペンまで行って、南のココンから、タイのハートレックに抜ける方法。そこでトライしたほうがいいって話です」
「どこの国境が入国しやすいんです?」
「それはわからない。でもなぜか皆、ここからいちばん遠い、ココンに向かいますね。ここにまた帰ってこないから、たぶん、入国できたんじゃないでしょうか。たぶんね」
知人もそんな気がしていたという。ここはそのルートに向かうしかなかった。しかしどの国境がいいだろうか。知人は迷ったが、やはり皆が向かったというココンに向かうことにした。
翌朝、出発した知人は、プノンペンに1泊し、その翌日、シアヌークビルへ。そこの安宿に1泊し、ココンの国境に向かった。
結論からすると、なんの問題もなくタイに入国できてしまった。
「アランヤプラテートの国境はなんだったのだろうか」
と思うほどのあっけなさで、なにもチェックしない感じで、簡単にスタンプを捺してくれたという。
これでさらに1ヵ月の滞在が可能になった。
しかし1ヵ月後……。
その知人は、バンコクで次の手段を探すことにした。
【下川からひと言】
その後、バンコクに住む何人かの日本人から話を聞いた。全員がココンからタイに入国していた。
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